1　ゲームボーイソフトのパッケージはどのような前提で設計されていたのか

ゲームボーイソフトのパッケージは、単に中身を包むための箱として作られたものではありません。結論から言うと、箱は「販売と流通を成立させるための仕様」として設計されています。

家庭用ゲーム機ソフトの箱と同じ感覚で見てしまうと、パッケージの役割を「見た目」や「外装」の話に寄せてしまいがちです。しかしゲームボーイの箱は、当時の売り場や物流の条件を満たすために、デザインより先に“形としての要件”が組み立てられていきました。

この前提を整理するために、設計の出発点になっていた条件を先に並べます。

① 箱は「作品表現」より先に仕様として決められていく

ゲームボーイの箱は、タイトルごとに自由に作られたというより、当時の販売環境に合わせて成立する形が優先されました。箱のサイズや形状、構造は、デザイン以前に“売り方”と“運び方”の条件から逆算されます。

この順序が重要です。パッケージデザインは最初から自由に発想されたのではなく、先に成立した仕様の枠の中で、情報をどう見せるかとして組み立てられていきます。

② デザインは「識別」と「情報伝達」を優先する

ゲームボーイソフトのパッケージは、限られた面積の中で、タイトル名やシリーズ性を短時間で伝える必要がありました。そのため、世界観の演出だけでなく、ロゴ配置、文字情報の整理、色の使い方などが「区別できること」を優先して積み上がっていきます。

ここで押さえるべきポイントは、パッケージデザインが“美しさの競争”というより、商品として見分けられる構造を持たせるために成立していく、という点です。

次章では、この前提を踏まえたうえで、携帯ゲームという商品特性が箱設計に与えた影響を整理していきます。